文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

マガザン×文鳥社特集「私小説」

2018/03/30(金)

小説の原稿を最後まで書ききってみて、それを編集者に読んでもらっているときがいちばん緊張する。「もう少しジャンプできる気がするな」電話の向こうで編集者が言った。ドラマツルギーがまだ十分に機能していないとか、読者が置いてきぼりになる可能性があ…

2018/03/29(木)

わたしはお酒が大好きでもともとよく飲むのだけど、最近あまり飲まなくなった。小説の初稿をあげるまでは願掛けでビールを絶っていて、それを解禁したら前みたいに毎日飲むかと思っていたがそんなことはなかった。「お酒を飲みたい」という日の気分には二種…

日記小説番外編、再録2018年2月5日

これは、2018年2月5日(月)に行われた座談会の記事です。 宿の主人であるマガザンキョウトの岩崎達也くん、文鳥社の柳下恭平・土門蘭、そしてマガザンキョウトのデザイナーであり、文鳥社の処女作『100年後あなたもわたしもいない日に』のデザイナーでもあ…

2018/03/28(水)

短編をもう一度ゼロから書くにあたり、ノートに手で書いてみようと考えた。以前編集者が言っていたのは、「書く速度によって書かれるものが変わる」というようなことで、キーボードはやはり速い。速すぎて書けないのかもしれない。それでシャープペンシルを…

2017/03/27(火)

ある短編がなかなかできなくて、また今日もゼロから書いた。これで3つめだ。登場人物を変えて同じ風景を移動してみる。そうすれば、最後まで書ききれるのではないかと期待をもって。それでもやはり、キーボードを打つ指の動きは徐々に遅くなっていく。それは…

2018/03/26(月)

マユミさんが宿に来た。マユミさんは、『100年後あなたもわたしもいない日に』の共著者で、絵を描いているひとだ。来月、緑地公園駅にある本屋さんで絵と短歌の展示をするので、その打ち合わせのために大阪から京都まで来てくれた。こたつに入って、マユミさ…

2018/03/25(日)

『100年後あなたもわたしもいない日に』の展示が4月から始まるのだけれど、その展示のタイトルを何にするかという話をしていて、柳下さんが「これはどうかな」とわたしの詠んだ新しい短歌のなかからひとつ、上の句を選んでくれた。自分の短歌なのだけど、い…

2018/03/24(土)

宿には行かず。午前中、喫茶店で仕事をした。小説を書くことは、何もしないことと似ているな、とふと思った。

2018/03/23(金)

久しぶりに晴れた。桜が咲いていた。学生時代の友達が書き仕事をくれた。息子の卒園式だった。今は、金曜日で夜更かし中の息子の前で、原稿を書いている。「できるかなあ」と言うと、「できるよ」と言われた。できるまで書けば、必ずできるよ。

2018/03/22(木)

ある原稿を書いている。それはわたしの故郷である呉について、自由に書いてほしいという依頼のお仕事だ。制限はだいたいの文字数と写真の枚数以外ほとんどない。昨日原稿を書いたものの、途中で筆が進まなくなった。明日になったら書けるだろうかと一旦寝て…

2018/03/21(水)

春分の日。宿には行かず。朝の8時半、雨が降っていたので傘をさして近所の喫茶店へ行き、モーニングを頼む。バタートーストにはピーナツバターが添えられている。ゆでたまごを飲み込んだら喉に詰まって、あわててコーヒーで流し込んだ。午前中、書き仕事。お…

2018/03/20(火)

わたしは20代のころ、5年間出版社で営業職についていた。営業の仕事には最後の最後まで慣れなくて、毎日辛かった。売上成績は悪くなくて、むしろ良いほうだったのだけど、それでも自分はこの仕事に向いていないとずっと思っていた。きのうと今日、初めて『10…

2018/03/19(月)

午前は曇りだったけれど、昼過ぎには雨がぱらぱらと降り出した。 宿に着くと誰もいない。土曜と特に様子も変わっていない。わたしは上着を脱いでお湯を沸かし、その間にPCを立ち上げメールをチェックし、それからお湯が湧いたので緑茶を淹れた。 ガラス扉の…

2018/03/18(日)

日曜。宿には行かず、家にいた。寝室で、編集者がきのう話してくれたキュリー夫人のエピソードを思い出す。「すごく寒い夜、キュリー夫人の部屋にはベッドしかなかった」わたしはその話を、堀川通を渡りながら聞いた。「すごく寒いのに、からだをくるむ毛布…

2018/03/17(土)

朝、支度をしていたら柳下さんからメッセージが来た。「荒神橋にイーハンくんといるよ!」と言う。約束の時間までまだだいぶあったので、もう少ししてから出ようと思っていたけれど、すぐに出ることにした。あと15分くらいで出られると思う、とメッセージを…

2018/03/16(金)

20代前半、すごく運転が荒かった時期がある。荒く運転してもなかなか事故は起きないものなのだな、ということに気づいてから、ゆっくりと運転は荒くなっていった。自分でもそれはわかっていた。ある日、高速道路で「あ。車線変更しないと」とふと思い、ウイ…

2018/03/15(木)

正午、編集者と電話で少し話す。「今ね、赤坂見附」と彼は言う。タクシーを降りたところらしい。「お昼時なんだね。紺色の背広姿の人でいっぱいだ」12時だからね、とわたしは返しながら、「ああ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ」と頭のなかでつぶ…

2018/03/14(水)

宿には行かず、終日在宅。家にいたらチャイムが鳴った。出ると、セレマのアンケートですと言われた。「1、2分ほどお時間いただけないでしょうか」これまでならわたしは断りきれずに「はい」と答えていたけれど、今日はお断りした。「時間は有限だからね」と…

2018/03/13(火)

宿には行かず、一日中在宅。今手元には3つの図書館から集めてきた資料が20タイトルほどある。最初は情報がなじまず、点と点と点でしかなかったのだけれど、実際に舞台となる街へ帰り、その地の図書館の司書さんと話をしただけで、もう一度読み返すとそれらが…

2018/03/12(月)

今日はとても良い天気だ。午前中は資料を読んで、小説の年表を作りなおしていた。舞台は決まったが時代をどうするかがまだかっちり固まらない。悩みながらお昼を食べ、そのまま自転車で宿へ向かう。ペダルを漕ぐごとに、頭の中の情報がこなれて発酵したらい…

2018/03/11(日)

呉市滞在、二日目。朝、舞台となる場所について調べるため、呉市の中央図書館へ。天気がとてもいい。遮光ガラスが日光であたためられて、暖房の効いた館内は汗ばむくらいだった。ここはわたしが小学校のときから通いつめた場所で、これまでにわたしが吸収し…

2018/03/10(土)

小説を書くために、生まれ故郷の呉市に帰ってきた。 夜の港を歩きながら、寂しいところだなと思う。 ぼろぼろの小さな家。 わたしの生家を、編集者と訪れる。 編集者に、 「君のことをより深く知れてよかった」 と言われた。

2018/03/09(金)

宿には行かず、午前は家。午後は図書館で調べ物。午前、編集者と電話で打ち合わせ。改稿している小説の、舞台、時代、国籍の変更について話し合う。そのために、本当にわたしが書きたいものは何なのかを明らかにするための会話をする。でも、うまく話せない…

2018/03/08(木)

雨が降っている。久しぶりに宿に来た。エアコンをつけようとしたらつかない。このエアコンはいつもそうだ。リモコンをさまざまな角度から向けても、ボタンを強く押してもやさしく押しても、全然だめ。今日もまったく反応しないので、諦めてアラジンのストー…

2018年3月7日(水)

今日も宿には行かず、家にて1日中書いたり読んだりしていた。小説の資料を読んでいくうちに、ノンフィクションの力強さに殴られたような気分になる。ノンフィクションの描くものと、フィクションの描くものは違う。なんだったかな。編集者はこんなことを言っ…

2018年3月6日(火)

宿には行かず、打ち合わせへ。お昼を食べに行ったら、隣の席のおじさんがひとりきっちりと手を合わせ「いただきます」と言って、親子丼を食べていた。わたしは鯖の味噌煮を食べた。窓の外は快晴だった。ある方から突然メッセージをもらう。その方は、これま…

2018年3月5日(月)

長男が発熱したため宿には行けず、1日家。夕方には次男も発熱したとのこと。ふたりを連れて近所の小児科へ行く。インフルエンザは陰性だった。夜、ごはんをさっと食べて、『100年後あなたもわたしもいない日に』の在庫を取りに宿へ自転車で向かう。夜の丸太…

2018年3月4日(日)

日曜なので宿には行かず家で過ごす。ミュージシャンの友人が新譜を出すのでライナーノーツを頼まれていた。その初稿に対する返事が来て、緊張しながら読む。「昨日からなんどもじっくり読ませていただきました。素晴らしい文章、本当にありがとうございます…

2018年3月3日(土)

土日は宿には行かず、子供と過ごすようにしている。長男にどこか行こうと言われたので「図書館行こうか」と返すと喜んだ。長男は図鑑が好きだ。ずかんをかりよう! と言う。わたしは小説の資料を集めることにする。昨日、編集者がそのやりかたを教えてくれた…

2018年3月2日(金)

宿には行かず、一日中家にいて、書いていた。編集者が、登場人物の国籍と舞台について、考え直してみてはどうかという意見をくれて、「あ!」と思う。書き直す労力や不安よりもさきに、どんどんピントが合っていく喜びのほうが断然大きくて、それを感じられ…