文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

文鳥社宣言

言葉はいつも、こだまのようだ。
それは、口から出たものか指先から出たものかに依らず、発すれば、いつまでもいつまでも反射を繰り返して、僕らの想像の及ばないところまで、遠く遠く届いていく。そして、長かったり短かったりの時を経て、やがてまた、自分のもとに戻ってくる。エコー。
僕は、目の前の誰かに話すのも、遠い山に暮らす誰かに話すのも、実はまったく変わらないんじゃないかなって思っている。
「ヤッホー! 僕の話を聞いてよ!」なんて、ただ、情熱をもって発するのみ。
大切なのは、それだけじゃないかな。

今、生まれようとする僕ら文鳥社は、自由な出版レーベルだ。
本が好きで、言葉に救われてきた僕らが作る、在野の意気だ。
京都・荒神橋に生まれつつある僕らは、たった二人で、それが、とてもとても軽やかなんだ。

誰でも一生に一冊は本が書けるなんて聞いたことがあるけれど、それは嘘だと思う。だって、本を書くって途方もないことだもの。
でも、誰でも一生に一冊は、本が作れると思う。換言すれば、誰でも一生のうちに少なくとも一冊、自ら望んで読みたい本があるはずだということ。自分のことでもいいし、好きな誰かのものでもいい。文鳥社はそれを信じて本を作りたい。
自分たちが読みたい本を作って、自分たちで世界に渡していく。そのままの熱量で、作って届ける。なんて清清しい気分だろう。

さあ僕ら、出版人たれ。本を作ればそれが適う。
晴れた日には荒神橋で会おうよ。
パンを食べながら、コーヒーを飲みながら、朗らかに僕らは、これから作る本のことを話すんだ。

2/12/2017 文鳥社・柳下恭平