文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018年3月5日(月)

長男が発熱したため宿には行けず、1日家。
夕方には次男も発熱したとのこと。ふたりを連れて近所の小児科へ行く。インフルエンザは陰性だった。


夜、ごはんをさっと食べて、『100年後あなたもわたしもいない日に』の在庫を取りに宿へ自転車で向かう。夜の丸太町通りは気持ちがいい。


宿に着くと灯りがついていて、中に岩崎くん、しまちゃん、けいこさん、小嶌さんが中に居た。けいこさんと小嶌さんはこたつで向かい合ってそれぞれ仕事をしているみたいだった。明後日からふたりともヨーロッパに行くらしい。

しまちゃんが、在庫30冊をビニル袋にまとめてくれていた。本は10冊ごとに茶色いクラフト紙にくるまれているので、それが横に三つ並ぶと何だか食パンのように見える。
「食パンみたいになってしまいました」
としまちゃんがわたしの思っていたことと同じことを言った。わたしはお礼を言い、食パンみたいな本たちを受け取る。

けいこさんが使っていたカップはベージュから乳白色をしていて、ペアのガラスのソーサーがついていた。
「かわいいな」と思って見ていたら、小嶌さんがそれを手にしてまた置いたり、また手にとったりした。喋りながら、多分無意識に。小嶌さんも、「かわいいな」と思っているのかもしれない。それは本当に、すごくかわいいカップなのだった。

小嶌さんは髪を切っていた。すごく長かった髪が、肩の下くらいまでになっていた。
「誰も気づいてくれない」
と言って小嶌さんはカップをまた手にとり、目の前に持ってじっと見る。いろいろとあり、ちょっと元気がないみたいだった。

岩崎くんが
「そのカップ気に入った?」
と言った。
「あげるよ。それ」

小嶌さんが「えっほんとに?」と目を丸くする。
「古道具屋さんで見つけて、気に入って買ったんだけど。なんか色が、ミルクセーキを飲むしかないような色でしょ」
わたしは「確かに」と言い、
「ミルクティもいいね」
と付け足す。

「よかったですね」
と言うと、小嶌さんは少し恥ずかしそうに笑って、
「じゃあ、マイカップにする。ここでの」
と言った。