文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/03/08(木)

雨が降っている。久しぶりに宿に来た。

エアコンをつけようとしたらつかない。このエアコンはいつもそうだ。リモコンをさまざまな角度から向けても、ボタンを強く押してもやさしく押しても、全然だめ。今日もまったく反応しないので、諦めてアラジンのストーブに火をつける。何度か失敗したが、3度めでついた。ストーブもまだうまくつけられないが、暴発を恐れないようになったことは、この宿にいるあいだに成長した部分だと思う。


今、精華大学の4年生のインタビュー記事を書いている。ふたりぶんをデザイン担当のけいこさんに送る。

「わたしはデッサンが苦手で細密画もぜんぜん。
だから気持ちよく描かないと、自分が描く意味がないんです」

気持ちよく描くと、それが見ているひとに伝わるのだという。
文章もそうだ。ただ楽しく、というのではなくて、書くことの喜びを感じられているかどうかということ。
だから、気持ちよく書くために自分を保つ必要がある。それが、書いていないときも書いている、ということなのだと思う。


岩崎くんが来て、
「エアコンつけへんの?」
と言ってリモコンをかざす。するとエアコンはすぐについた。
「なんでそんなにすぐにつくの?」
驚いて聞くと岩崎くんは、
「心のなかでこんにちはーって挨拶してつけんねん」
と言う。
わたしが笑っていると、彼はわりと真面目な顔で
「いや、上の階なんて全然つかへんから、敬礼してからつけるよ。お願いします、ついてください、って。そしたらつくねん」
と言った。

しまちゃんが来て、岩崎くんが今日やってほしいこととして「外のネオン看板を外してほしい」と言った。そんなことひとりでできるのかなと思いながら聞いていたら、しまちゃんは気持ちよく返事をして、あっというまにネオン看板を取り外した。そして梱包もすいすいやってのけた。しまちゃんはやっぱり宿の妖精みたいだな、と思う。

こたつの上で小説の資料を読む。重たい内容なので悲しい気持ちになるけれど、横ではしまちゃんがてきぱきと動き、岩崎くんが「きょう寒くない。僕は暑いのだめやけど、寒いのは大丈夫やねん」と言っているので、いつもよりは悲しくならない。