文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/03/31(土)

編集者の赤入れが入った原稿をもらって、それからお酒を飲んだ。二人で飲むのは久しぶりだ。文鳥社初めての期末の日だと、桜を眺めながらジントニックを飲んでいるときに気づき、乾杯をする。いろいろあったね。そうだねえ。1年前には1年後にこんなふうになっているとは思いもしなかったな。そうだねえ。

編集者が
「僕は君がきのう送ってくれた原稿を読んで泣きそうになったんだ」
と言った。
「この原稿は僕が入ることでもっとジャンプできると思った」
こういう瞬間を、どうして自分がこんなにも好きなのか、自分でもまだ言語化できていないと言った。

「わたしは小説という大きなものの一部になりたいな、と思うんだ」
そう言うと編集者は「小説という大きなものの一部か」と繰り返し、「あのね」と言った。
「僕は本の神様を本気で信じているところがある」
わたしは「わたしもだよ」と答える。
「そこに個はないのかもしれないね」
「そうだね。ないのかもしれない」
「ひとつの宗教のようだね」
「そうだね。何かを判断する基準が、小説を書けるか書けないかしかないというのは、安らかな感じがする。わたしは初めて、宗教というものを知った気がするな」