文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/04/09(月)

柿次郎さんにインタビューをした。

初めてインタビューというのをしたのは19のときだけれど、気づいたら10年以上続けてきた。でも、一向にコツが掴めないし、うまくできない。前日からよく眠れなくなるくらい緊張してしまうし。とても不器用なインタビューだと思う。決して得意ではないし、好きかと言われるとそれも違う気がする。ただ「したい」と思う。

したいインタビューとは何かというと、わたしは「ふたりで言葉を探すこと」だと思う。
「言葉をもらう」のではなくて、「言葉を探す」。ふたりで。わたしと、彼・彼女で。
それはコミュニケーション。とても濃密な。だから正解はないし、とてもエネルギーを使う。


柿次郎さんは、たくさんのことをわたしに話してくれた。1時間のつもりが2時間半。考えてみればこれまでしたなかで最長だったかもしれない。映画が一本観れる時間、わたしの質問に柿次郎さんは答え続けてくれた。
「全部話さないと、土門さんが聞きたいことにたどりつけないと思って」
ガラス張りのカフェのなか、外がどんどん暗くなっていくのを感じながら、こつこつと土を掘り続けていく感じだった。時に道をそれたり、違う場所も掘ってみたりしながら。

ずっと掘り続けて、最後の30分にさしかかったときに出た言葉に、思わず立って拍手しそうになった。嬉しかった。「聞きたいことにたどりつけ」た気がした。

でもそれにも正解はない。ただ、熱量をかけて一緒に掘り出した答えであるということだけが、わたしには「良い」と思える基準だと思う。だからわたしは、インタビューをしたあとは空っぽだ。無我夢中だから、何を話していたか覚えていない。あるのは「掘った」そして「何かを見つけた」感触のみ。テープ起こしをしてやっと、「こんなことを話していたのか」とわかる。

気がつくと日がとっぷりと暮れていた。立ち上がるとふらふらした。
爪の中に土が残っているかのような、そんな感覚でカフェを出る。