2018/05/06(日)
blackbird booksさんへ行く。「寺田マユミ・土門蘭 絵と短歌展 目覚めたらふたりは世界の果てにいる」が今日で終わる。もうこの景色を見ることもないんだな、と思いながら、壁の前に立つ。
この本屋さんにわたしたちの本が迎えられた不思議を思う。
発刊直後の吉川さんの連絡は、小さな奇跡みたいで。そしてそれから、ここで小さな光みたいな出会いがたくさん起きた。わたしはきっと目を閉じたときにその光をまぶたの裏に見るんだろうと思う。走馬灯。
わたしは本棚を見てまわり、それから手にとった本をじっくりと読んだ。5冊本を購入した。ここで出会った本なのだと、これからもきっと思い出すだろう。いつか思い出すその記憶が、わたしはうれしかった。
「友達にプレゼントしたくて」
と言って『100年後…』の2冊めを購入してくれた方が今日はふたりもいた。
黒く細いリボンで包装をする吉川さんの手元を見ながら「きれいですね」とわたしが言う。「このあとにもっと素敵なものがつくんですよ」とマユミさんが言う。吉川さんは黙ったまま手を動かし、白い模様のついた、黒い羽を一枚つけた。
「ブラックバードだ」
わたしとマユミさんが言うと、吉川さんがはにかむように笑った。
「100年後もここで会いましょう」
芳名帳には、そんな言葉が残されていた。
小さな白い看板。紺色の自動販売機。100円の古本箱。入り口そばの、花瓶やドライフラワー。詩集や歌集の集まった台。暮しの手帖やrelaxのバックナンバー。レジの後ろのレコード。コーヒーマシン。そして眼鏡をかけた寡黙な店主。
100年後、あなたもわたしもいないけど、きっとまたここで会いましょう。