文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/05/09(水)

ひとりめの章を改稿して、ついさっき編集者に送った。編集者は今結婚パーティの撮影のようだ。彼は写真を撮ることができる。どんな風景なんだろうな。そしてどんなふうにこの章を読むだろう。

朝からずっと家で小説を改稿していた。朝から夕方まで小説を書けるだなんてとても恵まれた環境だと思う。会社員をしていたころは、夕方家に帰るまでの1時間喫茶店に行って、早起きをして、夜ふかしをして、書いていた。あるいは育休中に子守をしながら書いていた。こうして集中して長い時間をとることはできなかった。
今は他にすぐとりかかるべき原稿がなくて、小説に時間をとることができる。いつ入るかわからない、今のうちに書かなくては。


小説を書いていて、涙が出た。なぜ泣くのかわからない。悲しいのか、寂しいのか、辛いのか。よくわからない。全部な気がする。書いていて泣いているのか、読んでいて泣いているのか、よくわからない。

小説とは、本当になんなのだろう。物語でもない、歌でもない、スケッチでもない。なんなのだろう。なぜわたしはこれを書きたいと思うのだろう。生き物みたいだ。

今わたしは14の女の子になっており、とてもやわらかい心になっているように思う。飲みに誘ってくれた友達のメールも、炊事場にたまっているお皿も、わたしからずいぶん遠く離れたように見える。

32歳に戻り、子供を迎えに行き、夕飯を作らなくては。
今、そこに戻るための、文章を書いている。

明日もまた、小説を書く。
大丈夫、必ず書ける。
そう自分に言い聞かせて手を動かすことでしか、書けない。