文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/05/14(月)

家にこもって小説を書いていると、「自分」というのが先鋭化する気がする。
今日久しぶりに外に出て、人と打ち合わせをしていると、その「自分」が均されていくのを感じて、少しだけ楽になった。

最近情緒不安定だったのはそれでかもしれない。
先鋭化した「自分」は、自分の日常生活のあらゆる場面できいきい摩擦音を出してしまって、耳を塞ぎたくなる。
「ああいやだ、自分がいやだ、自分から脱け出したい」と、何度思ったかしれない。

今日の打ち合わせ場所は、自転車で行くには少し遠かったけれど、街をかきわけたくて自転車にした。空気が動いて、風景が動いて、自分の棘がぱらぱらと落ちていく感じがした。棘をすべて失うわけにはもちろんいかないけれど、間引きが必要なのだと思う。オルゴールを鳴らす棘のように。


午前中、打ち合わせのあとに編集者と少し打ち合わせをした。
「相関図を書いてみてはどうだろう」
と彼は言った。
「誰が誰をどう思っているか、矢印で書いてみるんだ」

それで書いてみた。書いてみたら、矢印にどんな言葉を入れたらいいのか、考えなくてはいけなくなる。これまで保留にしていたことを、すべて一旦、簡潔な言葉にしてみる作業だ。
「好き」? 「嫌い」? 「共感」? 「憎しみ」?
何だろう、何だろう、と考え続けて、思い切って書いてみては、その言葉がなじむのを待ってみる。そうしてやっと埋めたときには、
「そうだったのか」
と、いろいろなことがわかったような気がした。
目の前のもやがふわーっと動いて、ぱちん、ぱちん、と、ピースがはまっていくような音がした。
書けるかもしれない。手が、うずうずした。

登場人物どうしが影響を与え合うことで、この小説は成り立つ。
そうでなければ、5人いる必要がない、と編集者は言う。本当に、その通りだと思う。

1章のあとに取り掛かった、3章の第2稿を書き上げる。