文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/05/29(火)

このあいだ『小説家を見つけたら』という映画を観た。小説を書きあぐねていて、何かカンフル剤になるようなものはないかな、と思って、タイトルだけで決めた。TSUTAYAで借りて、家で観た。小説家は、タイプライターで文字を打っていた。

「考えずに書くんだ。初稿はハートで書く。二稿目からは、頭を使う」

そういうふうなことを言っていて、なるほどな、と思った。
「書け書け土門蘭」と編集者が言うのと、きっと同じ意味なのだと思う。とにかくなにか書かないと、刈り込めない。


今日、午前中に税理士さんが来て、法人税の金額を伝えてくれた。その足で郵便局に行き、きっかり全額を支払った。文章を書き、本を作って売り、それで受け取ったお金を京都という街に還元する。わたしたちはすごいことをしているな、と思った。自分たちの仕事が、じんわりと街に染み付くようだった。街にわたしたちは、祝福されるだろうか。されたいな。そう思えているうちは、まだまだ甘いのだろうか。


「自分のために書く文章は、人に見せるための文章よりもすぐれているよ」
映画のなかで、小説家はそう言っていた。
何も考えずに書く、ということは、適当に書くということではないのだ。
自分のために、心のままに、書くということ。


改稿をしていると、ときどき、まったく新しく文章を書かねばならない場面に遭遇する。そのとき「ああ、0から文章を書くのはこんなに大変だったのだな」と思う。
それを繰り返してきたから、今目の前の文章があるのだ。
ありがとう、過去のわたし。がんばってつなげよう。最後まで書き切ろう。