文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/06/16(土)

長男がわたしといると不安になるのだと言い出して、その言葉が非常にこたえた。わたしと家に残るのが不安で寂しいのだという。全然遊んでくれないからと。それで、用事で家を空ける予定だった夫が長男と次男を連れて、実家に預けると言った。長男は家を出る前、ママが嫌いなわけじゃないと繰り返し言った。でもさみしいのだという。なんだかすごく悲しかった。自分は自分のことでいっぱいいっぱいになっている。

ベッドにうつぶせになりながら少しだけ泣いているといつの間にか眠っていて、ときどき起きてはうたた寝をした。昼ごはんを食べないまま夕方までそうしていたので、鏡をみると顔が真っしろだった。
冷蔵庫を開けるとチーズがあって、それから次男用に残していたバナナを食べた。あたたかいものを食べなきゃ、と思って、近所の台湾料理屋さんに行き弁当を持ち帰った。

テレビをつけて観ながら食べた。子供がいるとそういうことはしないので、すごく久しぶりだった。テレビも久々に自分からつけた。家のなかに音がなくて、このなかでごはんを食べるのはいやだった。
つけると、「警察24時」みたいな番組をやっていた。長男はこれをみると必ず「ママの好きなやつや」という。正確には「ママのパパが好きなやつ」で、わたしの父が好きだったのだ。わたしも父に「お父さんの好きなやつやりよるよ」とよく言っていた。

番組ではオレンジのハイヒールを履いて、白いシャツを着た女の人が顔にモザイクをかけられていた。万引きの現行犯だという。
「きれいなシャツ」
とわたしはつぶやいた。

彼女はR1というヨーグルト飲料と、菓子パンを盗んでいた。「そのヨーグルト、いいよね」とわたしはまたつぶやく。菓子パンは、子供に朝食べさせるつもりだったという。772円。彼女が盗んだものの合計金額。「ご主人は?」と聞かれて「ごしゅじん」と彼女は繰り返していた。おそらく、呆然としていたのだろうと思う。旦那さんは仕事中で、お願いだから電話しないでくださいと懇願していた。叫び泣くみたいに。子供は何歳なんだろう。こんな菓子パン、うちの子だったらすごく喜ぶだろうな、と思った。

それから小説を書いた。つぎは5章の改稿。
ごめんね、と思った。明日は、笑って会えるかな。