文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/06/26(火)

長男がもらってきたかぶとむしの幼虫が、きのう一匹、そして今日また一匹、成虫になった。わたしは虫を育てたことがないので、幼虫は多分成虫にならないまま死ぬのだろうと思っていた。なんとなく。だから、成虫になったときには、思いがけず嬉しかった。

長く生きて3か月だと言う。3か月しか生きられないなら、こんな箱に入れないで、どこか森のなかに放したいと思う。そう言うと、長男は賛成した。ただ、森がどこにあるのかわからない。どんなところがかぶとむしに適しているのかもわからない。わたしはわからないことだらけだ。今度、このかぶとむしをくれた子に聞いてみよう。

今日はひとつの原稿に思いがけず時間がかかった。
なぜだろうと考えて、いまだ言語化できていない部分を書いているからだとわかった。「孤独」というテーマのその連載は、今後ものすごくパワーを使うことになるだろう。
自分に向き合わないと、書けない。

でも文章とは、本来そういうものなのだから。


かぶとむしが裏側になって、脚をばたばたさせていた。
触れないので困っていたら、まわりのかぶとむしが手助けをして起こしてあげていた。
ああ、よかった、と思う。
そして、わたしも同じようなものなのだと思う。

ひとりで書いているけれど、読んでくれるひとがいる限り、きっとその文章は書ける。

カフカだったろうか。
「書いている限り人は完全には孤独でない」というようなことを言っていたのは。