文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/07/09(月)

放火されるのを待つ夢を見た。逃げるほうがいいか、ここで見張っていたほうがいいか、悩みながらうろうろと家の中を歩き回っていた。
目が覚めて、ほっとする。最近悪夢をよく見る。悪夢の良いところは、目が覚めたときに、現実がずいぶん良く見えるところだと思う。


編集者と料理の話をする。
わたしは料理が苦手だ。できないことはないけれど、上手だとは一度も思ったことがない。
おそらく、完成のイメージができないのだ。料理だけじゃない。裁縫も、工作も、大工仕事も、科学研究も、イベントも、ありとあらゆる「つくること」が得意ではない。完成のイメージができないから、常に、楽なほう、コストがかからないほうへいこうとする。そして、しようもないものができあがる。そんなだから、自分がつくったものはクオリティが低い、と信じ切っているところがある。良いものを見ても、良いものを食べても、それが自分にも作れるとは、思えない。

そんななかで、書くことだけは、別だった。完成イメージなんてないけれど、自分にとって、自分が書くこと、そしてそれを読むことが必要だった。どうしても。
だから続いている。それだけなのだと思う。


小説の赤入れを一通り終える。
途中で、きのう買ったタルトとクロッカンを食べた。甘いものがほしくてたまらない。きっと、頭を使っている、ということなのだろうが、頭をちゃんと使えているのか、不安になる。


赤を入れた小説の原本を取りに、編集者がイーハンくんと一緒にうちに少し寄るという。長男は「やなしたさんが来たらきょうかしょを見せないと」と言い、何度も窓の外を確認していた。編集者が来ると、次男がこわがって火がついたように泣き出した。彼の顔を見ないように、両手で目を覆いながら泣く。こんなにこわがる次男をわたしは初めて見た。編集者と話している間、ずっと次男はわたしの胸にしがみつき、顔を埋めていた。

編集者が、赤入れを確認し、うなずき、封筒に入れて持っていった。
ああ、やっと、ここまで来たなと思う。