文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/07/18(水)

編集者から電話をもらう。
「提案があるのだけど、これから週に一度は何もしないで休む日を作ったらどうかな」と言われ、驚く。
これから書く予定の原稿は複数あり、小説の改稿ももちろんある。取材だってもう数本決まっている。フルエンジンで取り掛からねばと思っていた矢先だったので、「何もしないで休む日を作る」と聞いて驚いた。

「まったくロジカルではないんだけどね」と編集者は言った。
「だけど、君は原稿製造機じゃないでしょう? 稼働すればするほど書けるってわけでもないと思うんだ」

それを聞いて不覚にも泣きそうになってしまった。そう。わたしは原稿製造機ではない。だけど「書かなきゃ」とずっと思っている。寝ても覚めても。そのことにだいぶ疲れていたのだと思う。

彼は、おすすめなのは「プールに浮かぶこと」だと言った。わたしはプールに浮かぶ自分を想像する。実際にはかなづちなので、仰向けで浮かぶことができないのだけど。多分、力を抜くのが本当に下手なのだと思う。余計な力が入りやすい気質なのだ。

「とにかく、オフラインの時間をまとまってとることが大事だと思う」と彼は言った。


電話を切ってから、原稿を書いた。着手して手を動かすと、それだけで少し気持ちが軽くなる。虚と実で言うと、わたしにとってはやはり書いている時間が「実」だ。「実」が少なくなると、自分のことが信じられなくなる。それは自信とかそういうものではなく、実体のないようなものに思えてくるのだ、自分のことが。

「実」のなかにも「虚」は入ってきやすい。純度の高い、強度のある「実」を保てるようにしたい。
そのための、「プールに浮かぶこと」なのかもしれない。