文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/08/03(金)

ラジオというのは、時間の流れの中にあって、そこに入るのはまるで、長縄跳びの中に入って飛んで出るみたい。せえの、で入り、リズムに合わせて飛ぶ。何度飛ぶかは、わからない。合図があったら出る。そのときまで、一緒に飛び続ける。つかの間の、関係性。

隣に座っていたアナウンサーの女性は、甘そうなコーヒー飲料をストローで飲んでいた。「交通情報です」と話し始めた彼女の声は、まさに車の運転中に聞く、あの声だった。「交通情報です」の女性は、遠隔にある閉ざされた空間に、ひとりでいるのだと思っていた。そこからひとりで、淡々と事実を発信しているのだと思っていた。こんなにも身近にいたんだな、と思う。

ホストの方は、本番が始まると、ぱちんとスイッチが入ったみたいに、とても興味深そうにわたしの話を聞いてくれた。するすると、言葉が出てきた。彼が役者さんだということを、思い出す。プロなのだ、彼は。

終わると編集者から連絡が来た。
「17歳の、本好きの女の子が聞いたら、ああ小説家ってこんな声で話すんだなっていうような声だったよ」
と彼は言った。