文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/11/26(月)

細切れに映画を観る、ということをよくしている。2,3時間通して観ることがなかなかできないので、お風呂に入ったあと、1時間もないくらいのあいだだけ映画を観る。そのようにして数日をかけ、1本の映画を観る。

今日は『マイ・フェア・レディ』を観終わった。わたしは『ローマの休日』も『ティファニーで朝食を』も観たことがないので、オードリー・ヘップバーンが動き話しているところを、この作品で初めて観た気がする。
マイ・フェア・レディ』は貧しく口の悪い花売り娘が、言語学者のもとを訪れ言葉遣いや発音を学び、立派なレディへ育っていくというお話だけど、わたしはこのイライザという女性のことをとてもえらいと思った。
イライザは、前日に稼いだお金を持って、教授のもとを訪れる。そして「相場の給料を出すから言葉遣いを教えろ」というのだ。花売り娘じゃなく、一流の花屋の店員になりたいからと。
そのシーンを観たときに、なんて気高い娘なんだろうと思った。自分の稼いだお金(運で手に入れたお金ではあるが)で、自分をよりましにしようとしている。自分よりもよっぽど身分の高い男に胸を張りながら「ちゃんと授業料は支払う」と言って。その、自分の足でしっかりとすでに立っているイライザに、わたしは胸が熱くなってしまった。

オードリー・ヘップバーンは、自分のふたりの息子たちに最期の言葉としてサム・レヴェンソンの詩を聞かせたそうだ。冒頭はこんな一言だという。
「魅力的な唇になるために、優しい言葉を話しなさい」

映画を観ると、心が密室から解き放たれるような気がする。
心が自由になる感じ。
だから時間がなくても、ときどきとても映画を観たいと思う。