文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/11/28(水)

このごろ、右手の中指に指輪をつけ始めた。金色の細い指輪だ。なんの飾りもない、潔く輝く輪。初めて見たときに、とてもうつくしい円だと思った。これが自分のものになると思うとどきどきした。お店の人に「素敵です。よくお似合いです」と言われ、常套句だとしても真に受けて赤くなってしまうほど嬉しかった。この指輪が似合う手でありたいと思った。

ずっとつけられる指輪が欲しいと思っていた。なぜだろう、よくわからないけれど、それはわたしにとって大人の象徴なのだった。耳よりも、首よりも、手首よりも、指。自分がものを書く仕事をしているからかもしれない。わたしにとって身体の中でとくに大事だと思う部位は目と指だ。だからだろうか。外さない指輪は、大人の象徴。後天的に意図的に身につけた、自分の身体の一部。

指には一本一本意味があるのだそうで、右手中指は直感とかインスピレーションを高めるとか邪気を払うとか書いてあった。この指につけると、ギャンブルや創作に良いのだという。中指にしたのは関節が太くて落とさないだろうと思ったからだけど、いい指なのだなと思った。中指にはめると、ちょうど真ん中に金色の線ができて、右手全体に調和が生まれたような気がした。

眺めていると、まるで自分のからだの一部が増えたようだと思う。
それがきらきらときれいに輝いていて、ふとしたときに、しみじみと嬉しくなる。