文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/12/13(木)

短歌を詠み始めたころ、ペンネームをつけた。「寄辺点」と書き、「よるべてん」と読む。初めてのペンネームだったが、その後ほとんど誰にも披露したことがなかった。この名前は、自分が19歳の頃から書き始めたブログ『よるすべるてんかふん』というタイトルからとっている。
よるべない、という言葉が昔から自分にしっくりくると思っていた。自分の感情に名前をつけてもらうとほっとする。わたしはその言葉をお守りのように持っていた。この感情に名をつけた人がいるということは、この感情はわたしひとりだけが感じているのではないということになる。その、同志のような存在の象徴が「よるべない」という形容詞だった。
寄辺点として詠み始めた短歌は、土門蘭のものとして出版された。そもそも寄辺点は短歌を詠む人格として作られたものだけど、それは土門蘭の一部であり、それなら土門蘭でいいかと思ったのだった。そういうふうにしたとたん、わたしはこれからなんでも書けそうな、許されたような気がした。でもそうさせてくれたのは寄辺点である。彼女がいたからわたしは短歌を思い切り詠めた。 わたしは今も時々短歌を詠んではInstagramにあげている。名前を「寄辺点」としていたが、「土門蘭」に変えた。でもIDは「tenyorube」のままにしている。なんとなく、それは変えられなかった。 点ちゃんはいまのわたしの短歌をどう思っているだろう。