文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018年に書いたもの

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2018年は「書くこと」を仕事にし始めた年だった。

普段は自分の書いたものをまったくまとめていないのだけど、今年はちゃんと振り返ろうと思う。


【小説】
『夜の港のわたしたち』

故郷の呉市を舞台に、というお題をいただき書いた短編小説。人生で初めていただいた小説の仕事で、書くのに本当に苦労した。一人称、二人称、三人称、会話文、といろいろ試し、最終的にこちらに落ち着いた。


『ソヨンによるニシャーダのためのカレーの話』

『国境なきカレ〜団』というカレーイベントに文鳥社として参加した際、小説付カレーを販売。「スリランカ×韓国で、小説を書いてほしい」というお題を編集者からもらい、スリランカカレーを食べに行って書いた。橋本太郎さんが挿画を描いてくださってとても素敵に仕上がった。こちらはwebでも読めます。


『同棲初日』

初めての紙媒体での小説掲載。お題は「同棲」。
すぐ頭に思い浮かんだのは、社会人3年目くらいの女の子と元バンドマンの男の子で、左京区の茶山に引っ越してきた恋人たちの1日目を書いた。大好きな上海バンドという中華料理店を作中に出したあと、挨拶をしにそのお店に行ったら、店主に喜んでいただけて嬉しくなり飲みすぎたという良い思い出。


もうひとつ、昨年からずっと長編小説を書いている。



【エッセイ】
『好きなことを仕事にできなかったわたしが、好きな人と働いて見つけた自分の「仕事」』

仕事を好きになれなかった20代と、その転機についてのエッセイ。「明日仕事行きたくないなあ」と毎日思っていた、辛い気持ちで過ごしていたあの頃の自分に向けて書いたような文章。働くことについて悩んでいるという方からたくさんご感想をいただいた。嬉しかった。

 

 連載 マガザン壁コラム『京都の街の、音を読む。』

泊まれる雑誌マガザンキョウトの壁にて、京都の愛する場所についてのコラムを書いている。第4回はNICE SHOT COFFEE。 最近は営業時間が短くなってしまったが、長く在ってほしいのでご無理なくやってほしい。岸本敬子さんのイラストもいつもすばらしくて楽しみにしている連載。


連載『ひと駅ごとの小さな旅』

嵐電沿線をひと駅ずつ歩きながら書く、散歩エッセイ。帷子ノ辻駅から担当。京都に住んで10年以上経つが、意外と初めて行く場所ばかりでいつも道に迷う。だけど、この連載のおかげで好きな場所がずいぶん増えている。

 
【インタビュー】
連載『経営者の孤独』

経営者の方と「孤独」について話す連載を始めた。
このインタビューは、毎回すごくエネルギーを使う。経営者の方々に、抽象度が高く、それでいて非常に個人的なお話をうかがうことになる、緊張感に満ちた時間。身を削って書いているのに、そのぶん別の何かが身についていっているような、そんな連載。


連載『スタンド30代』
30歳になったころから書いているインタビュー連載『スタンド30代』。生い立ちからうかがいながら、ひとりひとりの哲学や美学をあぶり出したいと思いながらやっている。同世代の方がかっこいいと誇らしく、負けてられないなぁという気持ちになる。



マガザンWeb

さきの『スタンド30代』の第一回にも出てくれた岩崎くんがやっている、泊まれる雑誌・マガザンキョウト。マガザンでは岩崎編集長がさまざまな人とコラボレートし、毎回ひとつの新しい「ホテル」を作る。わたしは、そんなふたりの軌跡を書き留める役割。さまざまなテーマと「ホテル」が掛け合わされ、毎回話をうかがうのが本当におもしろい。

 

わたしも文鳥社×マガザンで2月から5月まで一緒に空間を作らせてもらっていた。この座談会の全編を書いてくれたのはもてスリムさん。もてスリムさんの文章は、風通しがよくてとてもクール。ファンだったので、書いてもらえて嬉しかった。

 

その間、マガザンで書いていた日記小説。その日に起きたことを小説にするという試みをしていた。「書いてほしい」と遊びに来てくださる方もいて嬉しかったが、「土門さんはそういう期待に一切応えない」と言われていた。自分にとってはそれが大事だった。


ChillOuters

アウトドアをテーマにしたメディア『ChillOuters』でのお仕事。とは言え自分はアウトドア派ではなく超絶インドア派なので、「アウトドア」×「本」ということで軟弱古書店さんという登山や渓流釣り専門の本屋さんにお話をうかがった。元探検家の店主に「探検」についてうかがった上に、おすすめの本まで紹介していただき嬉しかった。


藤田医科大学 OB/OGインタビュー
OB/OGインタビュー一覧 | 藤田医科大学 

名古屋にある藤田医科大学様の卒業生インタビュー。医療の世界は本当に知らないことだらけだったけど、「仕事で大事にしていること」ということを軸にお話をうかがうと、みなさんの熱意や覚悟が伝わってきて、毎回目の開くようなインタビューだった。 


【ブログ】
『子育てランラン帖』

子どもとの暮らしについて綴っているブログ。朔太郎は2歳に、廉太郎はもうすぐ7歳になる。1日と10日 (子どもたちの誕生日)に更新中。


『一週一曲』

自分が副編集長をやっているフリーペーパー『音読』。そのチームのみんなと代わり番こで「好きでたまらない曲について思うがままに書く」というリレーエッセイをやっている。毎回、本当に思うがままに書いている。



『柳下さん死なないで』

 担当編集者である柳下さんのことを書き綴るブログ。柳下さんには「このブログには本当に迷惑している」と言われ続けている。4のつく日に更新中(来年からは14日と24日に更新予定)。

 

【紙媒体】

フリーペーパー 音読 14号『あなたの作品、いくらですか?』精華大学の生徒さんたちと一緒につくった音読。くるり岸田繁さん、デザイナー・イラストレーターの大西晃生さん、陶芸家のアルベルト・ヨナタンさん、そして現代美術家であり京都造形大学美術工芸学科長の椿昇さんに「作品に値段をつけること」についてインタビュー。めちゃくちゃ勉強になった。何度も読み返したい号。


京都精華大学デザイン学部パンフレット

京都精華大学様・デザイン学部の卒展の冊子にて、6学科・各代表の卒業生にインタビュー。6名の学生さんに聞きたかったことは大きくふたつで、「なぜこのテーマにしたのか」「ものづくりで大事にしていることは何か」。10歳年下の彼らからすごく刺激をもらって、インタビュー後はいつもくらくらしていた。


シゼンカイノオキテ『話を続けよう』 ライナーノーツ

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友達がやっているバンド、シゼンカイノオキテ。彼らの新しいアルバムのライナーノーツを書かせてもらった。前のアルバムを出したときには彼らにインタビューをしたのだったが、10年後にはこうして作品づくりに関わらせてもらって本当に光栄。10年経ってもお互いがお互いの領域で作品づくりを続けているのも、なんだかとてもいい。

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振り返ってみると、あれもこれも、全部今年書いたんだなあと思う。

何度インタビューをしても、何度記事を書いても、毎回毎回、「どうやって書くんだっけ」と思う。「これまでどうやって書いてたんだっけ」が役に立たないから、いつも0から書き出す感じで、手探りで、ときどき書けなくなったりして。
すごく大変だけど、毎回「どうやって書くんだっけ」ってなってしまって、多分いいのだと思う。

今年はこれまででもっとも書いた1年で、もっともご感想をいただいた1年だった。
書いて、読んでもらえて、嬉しかった。純粋に。


2018年、ありがとうございました。
2019年も、がんばります。