文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2019/01/04(金)

仕事始め。息子たちをそれぞれ送り出し、久しぶりにひとりきりで家で書く。落ち着く。早く平日に戻ってほしい気持ちも込めて、お正月飾りもとった。ドアにテープのあとがつくかなと思ったが、きれいにはがせて満足した。

昼過ぎ、小説を書いていたら無性に映画が観たくなった。それも邦画が観たい。それもアウトローが出てくるやつ。まてよ、物語の主人公になる人間はだいたいアウトローだと言えるのではないかとしばし考えたが、その答えが出る前に夕方が来たので、息子を迎えに行く前にTSUTAYAに寄る。『孤狼の血』という、故郷の呉市が舞台であるヤクザ映画を借り、あともう一本何か観たくなり、山田洋次監督の『学校』を借りた。これは定時制中学を舞台にした話で、自分が小学生の頃に金曜ロードショーを観て、えらく泣いた覚えのある映画である。『学校2』だったかもしれない。どちらでもいいか、と思い、それを借りる。

わたしの通っていた高校にも、定時制のクラスがあった。両親が家を出ていってしまい、働かざるをえなくなった幼馴染は、そこに通っていた。よっちゃんというその男の子は、わたしのもっとも古い友人で、ちょっといじめられっこで、中学までは「土門さん」と呼んでいたのに、定時制高校に通うようになると髪を染めたりするようになって、昔のようにまた「蘭ちゃん」と呼び始めた。それがなんだか、嬉しかった。

「おお」「おーす」と言いながら、タッチ交代するかのように入れ替わる。

受験生のとき、よく空いている教室で夜の9時前まで勉強していた。家に帰っても誰もいないから。定時制クラスから先生の声が聴こえる。それを聴きながらひとりで勉強するのが好きだった。なんだかほっとした。

TSUTAYAでそれを借りながら、ふとそのときのことを思い出した。前にいるおじさんがしょうもないことで大きな声で怒っていて、相手をしていた若い女性のスタッフが淡々と対応していた。えらいもんだな、わたしだったらおたおたしそうだな、と思う。
わたしとおじさんがいなくなったら、スタッフさん同士で「なにあのおじさん」って言うのだろうか。言ってほしいな。むしろわたしが「なんですかね、あのおじさん」と言いたい、と思いながら、店を出て長男を迎えに行った。