文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2019/03/21(木・祝)

久しぶりにひとりで散歩をした。近所のポストまで郵便物を携え、ごとんと音をたてて投函したあとは手ぶらで歩く。眼鏡もかけていないし化粧もしていない。夜の中、身ひとつで歩くのは気持ちがいい。自分のからだの重たさとか、かたちとか、質感とか、そういうのをいつもよりも感じる。

吐いてしまった醜い言葉であるとか、とってしまった失礼な態度であるとか、1日中閉じこもって淀んだ体内であるとか、書き上げられずに滞った原稿であるとか、そういうものがひとつひとつ頭に浮かぶ。夜の中を歩きながら、ごめんね、と思う。なんてみっともないんだろう。こんなにみっともなくても、裸眼で歩く曖昧な夜は受け入れてくれる。

このままどこかへ行くこともできる。蒸発するみたいに、溶けるみたいに、どこかへ消えてしまうこともできる。でも、わたしは消えてしまわないで家に帰る。

家に帰ると、散歩をする前と確実に自分が変わっているのがわかる。
わたしは一個の人間であって、物理的には誰とも繋がっていない。一個の人間として、移動し、生きていくことができる。

それがわかればそれでいいなと思う。