文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2019/04/03(水)

右手の親指に小さなできものができていて、虫に刺されたのか何か膿でも溜まっているのか、よくわからない。緊張すると親指をかきむしる癖があり、この頃はこのできものをわたしはよくかきむしっている。『ブラックスワン』という映画をずっと前に観て、思ったよりもホラーで観たことを後悔したのだけど、わたしもこの主人公のようにならないとどうして言えるのかなと考えたことがあった。自分で自分を食いちぎる感じというのか。だけどわたしは、自分の書いた小説を読んで、確実に癒されている。食いちぎる感じとはまた、違うかもしれない。自分の書いたものがひとつの作品として目の前に立ち上がったときに、「ああ、あなたもそうなのね」とすごく安心する。あなたとはわたしなんだけど。それはわたしがこれまでに受けてきた数々の小説からの恩恵であって、自分の手でそれを生み出せたこと自体が、嬉しくて。本当に世界は広くて、読むべき本はこの世にいっぱいあって、わたしはその大半を読めないままに死んでいくんだなと思った。わたしはその膨大な書架の一部となれたら、もうそれでいい。孤独だけど寂しくない気がする。
最近よく歌をうたっている。歌をうたうと、自分が空っぽになることを知った。自分の鼻歌はびっくりするくらい心細く響く。