文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2019/07/13(土)

久しぶりに大学時代からの友人に会った。彼女の家には大学生のときに泊まったり遊びに行ったりしたことがある。10年ぶりくらいに訪れた彼女の家は、やっぱりきれいに片付けられていた。彼女はわたしが会ったなかでたぶんいちばんちゃんとしている女の子だ。真面目だし、几帳面だし、気遣いもできて、秘書検定の資格も持っている。いつもきれいな格好をしていて、しかも美人だ。

小説を読んだ、と彼女は言った。「普遍的な孤独が描かれている小説だなあって、読み終わってすごく、さみしい気持ちになった」と。「この小説についてどう感じたのかを話すときに、自分自身が出てくる感じ」とも言っていた。感想を聞かせてくれて、嬉しかった。「蘭ちゃんがずっと一所懸命書いた小説だもん。楽しみに待っていたよ」と言ってくれた。

彼女は、わたしの出版を祝ってケーキを用意してくれていた。冷蔵庫から出してテーブルの上に置き、お店でもらったのだという花火に火をつけた。花火に火がついた瞬間、わたしたちは笑って、動画や写真を撮った。
笑ったまま、彼女のお母さんの写真を見つめた。写真のなか、彼女のお母さんもまた、よく似た顔で笑っている。帰りにお仏壇に手を合わせながら、「どうかあの子が幸せになりますように見守っていてください」とお願いした。

「もう出会ってから15年だね」と帰り道になんとなくわたしが言った。すると彼女は「こどもを産んでも、蘭ちゃんは『お母さん』にならなかったね」と言った。「蘭ちゃんだけはずっと変わらない」と。

「出会って15年経ったど、蘭ちゃんへの愛情は変わらないよ」とも言ってくれて、なんだか恥ずかしくなって笑った。でもとても嬉しかった。愛情をちゃんと表現できる彼女は美しい。闘病中だったお母さんも、彼女に一所懸命看病されながら、同じことを思っていたのかもしれない。わたしよりもずっと強く。