文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2019/08/27(火)

久々にプールへ行った。なかなか時間がなくて行けなかったのだ。通い始めて1年になるが、だいたい週に1度か2週に1度のペースで泳いでいる。

プールが好きかと問われると、別に好きではない。軽い閉所恐怖症なので水着がべったり肌に張り付くのもいやだし、シャワールームで密閉されるのもこわい。泳いでいるときに人とすれ違うのもこわいし、後ろから誰かに追っかけられているんじゃないかと思うのもこわい。だけど泳ぐたびにいつも発見がある。その発見のために行っているようなものだと思う。

今日発見したのは「シズル感」についてだった。水の中を歩いていると、プールの水がたゆたって泡を作ってとてもきれい。てのひらで掻き分けると、青いゼリーがくずれるみたいで、ついうっとりしてしまった。まるでやわらかいゼリーの中を歩いているみたいだ。おいしそう。
そこで思ったのが、「うっとり」したり「気持ちいい」って思う才能ってあるよなってことだった。つまり「シズル感」に対する感度の高さだ。わたしは食欲がない方なので、シズル感にあまり反応しないなということに気づいた。でも、シズル感をみずから探し出し積極的にアプローチすることならできるかもしれない。わかりやすく言うなら、とにかく目の前の事象に「うっとり」する。見とれる。快感を貪る。猫かわいいな、パンおいしそうだな、あの男の子すてきだな、ふとん気持ちいいな。なんでもいい。とにかく「今」を貪ること。

また発見してしまった、と思いながら、プールを出る。帰ってからバタートーストを作って食べた。「うまい」と声を出しながら。いつもよりもバタートーストはおいしくて、わたしはこれが大好きだったんだよな、と気づいた。