文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/09/23(日)

午前中、近所の喫茶店で原稿。ゆで卵とサラダとバタートーストがセットになったモーニングを注文する。わたしはバタートーストがとても好きである。食べ終わり、執筆。なぜかわたしはこの喫茶店のコーヒーが半分しか飲めない。いつも。濃いからだろうか。

午後、長男が水木しげる展へ行きたいというので、龍谷ミュージアムまで連れていく。わたしは水木しげるの作品を読んだことがない。テレビでは観たことがあるけれど。それで「劇画ヒットラー」と「のんのんばあとオレ」を購入する。

水木しげるは奇人が好きなんだという。安倍晴明ヒットラー鴨長明など、彼が「おもしろいな」と思う人のことを漫画にしている。のんのんばあも多分そうなんだろう。わたしも奇人が好きで、奇人を見ると書きたくなるので、なんとなく水木さんに共感を覚えた。

水木さんへの編集者からの手紙が飾られていたので読む。
箇条書きで、「ここがわかりにくいのですが……」ということが7つほど書かれてあった。わたしが読んだら凹んでしまいそうな手紙だ。水木しげるでもそうなんだな、と思い、少しはげまされる。改稿がすべてという自分の編集者の言葉を思う。

館内のところどころで上映されている水木しげる劇場なる短い映像を観る。
そのなかで、戦時中片腕をなくした水木さんが、すっかりなくなった腕のにおいを嗅いで「赤ちゃんのにおいだ」と言ったエピソードがあった。
それを聞いてわたしは思わず「えっ」と声をもらす。赤ちゃんのにおい!

うしなった腕から、生まれたばかりの命のにおいがしたのだという。わたしの鼻腔を、赤ん坊を産んだときのあの血と乳のにおいがかすめた気がした。すごい言葉だと思ったら、鳥肌がたっていた。