文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/08/13(月)

近所の喫茶店に小説の改稿をしに行く。お盆前は〆切に追われて手をつけていなかったので、数日ぶりに触れることができ嬉しい反面緊張や不安もあった。小説が手からすり抜けていってしまっていたらどうしようという不安。小説を触っていると、まだ手の中にある、という感じがして、幾分安心した。

最近よく同じ夢を見る。夢の中でわたしは何か文章を書いている。これは夢だから一所懸命書いても消えるのだ、ともうひとりの自分が自分に向かって言っている。でも、わたしは一所懸命書いている。「ああ、この言葉は二度と書けないだろうな」と思いながら。起きたときにはくたくたなのだ、いつも。

夕方『湯を沸かすほどの熱い愛』を観る。宮沢りえといい、杉咲花といい、魅力的な女性は声がいい。母を欠いた人たちの物語だった。欠けているからこそ、人力で獲得する愛や優しさが美しい。水色の下着を、お母ちゃんが安曇に贈るところがとてもよかった。勝負下着は、文字通り勝負のときのためにある。
お母ちゃんは死ぬ前に、生きていく強さを残したかったのだ。人力で。

たくさん泣いた。