文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/10/30(火)

プールに週に一度通っている。自分でも、泳ぐのが少しうまくなったということがわかる。50メートルを一度泳ぐのがやっとだったけれど、今は1日に何度かそれを泳ぐことができる。プールに行くのが憂鬱だ。面倒臭い。でも、泳いだら楽しい。何事も始めるまでが大変で、始まってしまえばおもしろいものなのかもしれない。

きのう次男の付き添いで行った耳鼻科の待合室で、朝日新聞を読んでいたら、樹木希林の家族写真が一面に写った広告があった。樹木希林の言葉が「/」で区切られていくつか並んでいた。
そのうちにこんな言葉があった。
「楽しむのではなく、面白がることよ。中に入って面白がるの。面白がらなきゃやってけないもの、この世の中」

なんだかこの言葉が心に残った。わたしはプールのことを考える。プールの面白さは、プールのなかでしかわからない。だから、わたしはプールのなかに入るしかない。

小説も同じだなと思う。原稿を前にするまでは怖気付いて怯えていたけれど、いざ原稿を広げ小説のなかに入ると、あとは手を動かすだけだった。水をかくように、小説のなかを泳ぐ。それは小説の外にいてはできないことだ。なかに入らなくては。
1章を泳いで、陸に上がる。疲労困憊。でも、そこで見た風景が気持ちよかった。