文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/06/05(火)

最近よく、夜に映画を観ている。
この間は『ブラックスワン』を観た。わたしは映画を観るとき前情報を取り入れないので、てっきりタイトルとモチーフからヒューマンドラマだと思っていたのがサイコホラーでびっくりした。痛そうなシーンがたくさんあって、そのたびに両手で目を塞いだ。ナタリーポートマンがどんどん痩せていって、最後は本当に鳥のようになっていた。観終わったらぐったりしていた。心の準備のしかたをずいぶん間違えてしまった。

映画をよく観るようになったのは、小説をずっと書いているからだと思う。まるでからからになった身体に水分を補給するかのように、映画をからだが欲している。外国のものがいい。字幕が観たいのだ。耳に聴こえる外国語、そして目に映る日本語。そのちぐはぐさが、小説と映画をつないでいるように思う。

今は三人目の女を書いている。一応、これを書き終われば、第二稿はすべてまわったことになる。テコ入れをしないといけないところがあり、そこでずいぶん苦戦したのだが、夕方にはあらかた過ぎることができたように思う。
その間、部屋のなかをぐるぐる歩き回った。ソファの背もたれに上から覆いかぶさってみたり、壁に手をついて押してみたり。鏡に映った自分を檻の中のゴリラみたいだと思う。

きょうも誰とも話していないが、これから保育園で保護者の集まりがある。うまく話せるのだろうか。

英語か、フランス語か、中国語か、韓国語か、なんでもいい。何か言葉を聴きたい。日本語以外のものを。そこから、日本語を読みとり書き出したい。新しく生まれた芽のような言葉。映画を観るとときどきそんな言葉に出会う。