文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2019/07/15(月・祝)

子供が生まれてから祇園祭には行っていない。今年もきっと行かない。人が多いし暑いからだ。息子たちは一度も祇園祭に行ったことがない。少し後ろめたい気もするが、京都生まれ京都育ちで祇園祭に行ったことがないというのもおもしろいかもしれないなと思ってそのままにしている。いつか誰かが連れ出してくれるか、自分で行くかするだろう。

初めて行った祇園祭りは大学1年のとき。奨学金を申請したら、3か月分がどんと7月に入ってきて、びっくりして、そのとき一番欲しいもの、浴衣を買いに行った。うすい桃色の地に、黒で菖蒲が描いてある。帯も巾着袋も黒にした。そのとき髪の毛に赤色のメッシュを入れていたのだけど、浴衣に合わないのでユニットバスで友達に真っ黒に染めてもらった。それを着て行った祇園祭はすごく幸福だった。とても似合うと褒められた。今も、その浴衣は手元にある。

お金はあるだけ使って、いつもすっからかん。食堂の100円のかけそばやバイトのまかないでしのいで、それでも発泡酒は飲まないと言い張り、鴨川で浴びるように飲んだ。恋をしていて、心を開いて話せる友達がいて、ひとりの時間が十分にあって、勉強もすごくおもしろかった。欲しいものを欲しいと言い、いらないものは手放せた。偏っていたし余裕はなかったけれど、わたしの大学時代は光を発していたと思う。あの4年があってよかった。わたしはあのとき、確かに学校という場所が好きだった。その記憶があるということは大事なことだ。

今年の夏は涼しい。今もわたしは同じ京都にいる。