マガザン×文鳥社「2018 本特集」公開編集会議を終えて
二条城の近くに、マガザンキョウトという場所がある。
「泊まれる雑誌」というコンセプトで、特集ごとに空間が変わっていくホテルだ。
立ち上げたのは岩崎達也くんという、わたしと同い年の青年で、出会ったときには会社員をしながら雑貨屋さんをやっていた。
次に会ったときには「ホテルをやりたい」と言っていて、さらにそのあとにはもうクラウドファンディングで資金を集め始めていて、さらにさらにそのあとには、マガザンキョウトという場所ができあがっていた。
彼とは居酒屋で知り合った。
第一印象は「よく食べる人」だった。
今では
「よく食べて、よく寝て、よく動く人」
という印象にアップデートされている。
そんな彼から、来年の冬に一緒にマガザンで特集を組もうと声をかけられた。
「柳下さんにも声をかけている」
と言っていた。そのときにはまだ文鳥社の話もなかったし、三人揃ったこともなかった。
「なんでわたしと柳下さんなの?」
と聞いたら、彼はいろいろ理由を言いつつも、最後には「まあ、なんかおもしろくなりそうやなって思って」とごにょごにょ言っていた。
その後文鳥社ができたので、彼の第六感が働いたのかしらと思う。
2月26日に、マガザン×文鳥社の公開編集会議と銘打ってトークイベントを行った。
文鳥社として、初めて人前で話す機会だ。
ありがたいことに十数名のお客様に集まっていただき、会場は満席になった。
マガザン、文鳥社の紹介から始まり、来年の冬にこの空間でどんなことをしたいか、いろんなアイデアを出し合った。
昨年にも、マガザンでは『本特集』が行われている。
「本を体験する」というテーマで、本を五感で楽しみ味わいつくす内容だった。
わたしは、せっかくならその『本特集』とは違うものにしたかった。
それで編集会議中に、
「インプットしたら、アウトプットしたくなりませんか?」
と言った。
食べたら出したくなるのと一緒だ。
味わいつくし呑みこんだなら、 今度は何かを生み出したくなる。
「前回の『本特集』が五感のインプットの場だとしたら、
次回の『本特集』ではここをアウトプットの場にしてはどうでしょう?」
断片的なアイデアを話しながら、「ああ、もっと本を読まないと」と思った。
もっともっと本を読んで、カロリーを栄養を摂取しよう。
そして、いっぱい動いて、おいしい実をつけよう。
その実がまた誰かの血肉になればいいな。
文鳥社は、それを体現するものになればいいな。
そして「出版」の生命循環の一部になりたいな。
そういうことを話しながら思った。
それがわたしの「本への恩返し」だなと、どんどんクリアになっていく感じだった。
お客様からもとてもおもしろいアイデアを出していただいたし、刺激的な出会いもたくさんあった。
「ここには種がたくさんある」と思った。
大風呂敷に一切合切その種を入れて、一粒残らず持って帰る気分で、その夜は帰宅した。
くたくたになっているのに、その風呂敷が気になって、帰ってきてからも眠れない。
そうしたら柳下さんから電話がかかってきて、今日あったことや感じたことをお互いに話した。
彼もきっと、風呂敷の中身が気になって落ち着かなかったのだろう。
ふたりで風呂敷から種を出し、きちんと整理して、文鳥社の引き出しに入れていく感じだった。
「いつかちゃんと形にしよう」
と話して電話を切った。
さあ、本を作らなくっちゃ、と思った。
その実はどんな色で、形で、においで、どんな味だろう。
「おいしい」と喜んで食べてもらって、その人のからだを強くする、一部になれたらいいなと思う。
文鳥社・土門蘭