文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/09/08(土)

友人と、上海バンドという中華料理店に飲みに行く。
今月発刊予定の雑誌に短編小説を書いたのだが、そこに上海バンドのことを書いたのだ。左京区に住む恋人たちの話である。

注文のときに名乗ると、店長は
「あの小説を書いた人か!」
とびっくりして、「書いている人は男だと思っていたなあ、なんでやろう」とおっしゃった。「えらい女心わかってはる人やなあって。そうか、女性やったのか」

友人と仕事の話や創作の話をしながらテーブルで飲んでいたが、途中からカウンターで飲みませんかという話になり、カウンターで店長も交えて話す。
友人がリュックサックから『100年後あなたもわたしもいない日に』を出してくれて、店長に「ぜひ読んでみてください」と渡してくれた。こうして一緒に飲む日に、リュックに入れて持ってきてくれていたのが嬉しかった。この話もしようと思って来てくれたのだろうかと思う。

店長はわたしの歌集を読んで「おもしろいなあ」と言った。
「メンヘラでもない、母親でもない、あなたという女が書かれてる」
わたしは驚いて「うわあ」と言った。嬉しかったのだ、なんだかとても。

ピータンとトマトの冷奴、水餃子、水ナスのサラダ、油淋鶏、どれもパクチー八角の良いにおいがしてとてもおいしい。

帰りに、誰もいなくなったお店のなかから店長が送ってくれた。
「あの小説、何回も読んだんですよ。僕はあの小説、不思議と好きやな」
そして最後にそう言ってくれた。


夜1時の出町柳を友人と歩いて帰る。
「話したいことの半分は話せた」
と言っていて、もう半分はまた今度話そう、と返した。

夏と、夜と、雨のにおいがした。