文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/11/13(火)

保育園から電話がかかってきて、次男が熱を出したという。迎えに行ったらぬいぐるみを抱いてぐずぐず泣いて、わたしを見ると「がっこー(だっこ)」と言って抱きついてきた。きのうの夜に四種混合のワクチンを打ったからその副作用かもしれない。連れて帰ったら昼寝をしたので、そのすきに仕事を進めた。

途中母から電話があり、出ると「口もとがずっとしびれるので病院に行ったら、脳梗塞になるところだったらしい」と言っていた。驚いたけれど、普通に話しているので実感がわかない。実感がわいていないと伝わると傷つくかと思い、できるだけ優しい言葉をかけた。「でも、孫たちが大学生になるまでは死ねない」と言っていた。このあいだまでは「孫の顔を見るまでは死ねない」だったのが延びている。「お母さんが死ぬと困るじゃろう?」というので「困るよ」と答えた。だけどやはり実感がわかなかった。彼女がもしも死んでしまったら、わたしは何を後悔するのだろう。できることが多すぎて、しなかったことが多すぎて、多分後悔もあふれるように出るだろう。母はわたしに苦労をかけたし、わたしは母に苦労をかけた。それでもなんとか母子として生きてきた、それだけでいいのかもしれないけれど、と思う。

エッセイをひとつ書き、小説の改稿を進めた。ひとつわかったかもしれないことがある。その仮説を胸に、小説のなかを進んでいく。ほらここも、ほらここも、と、これまでに書いてきた言葉を照らしながら、書き直しながら、進んでいく。

次男には『崖の上のポニョ』を見せていた。赤ちゃんが画面にうつると、「かぁいいねえ」と言って嬉しそうに笑った。あなただってまだ赤ちゃんなのよ。そう言おうとしたけれど、いつの間にか次男は大きくなっていて、赤ちゃんじゃなくなっていた。