文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/12/20(木)

日記を書かないままに眠ってしまった。おはよう。今朝はとても寒い。ひとつの原稿が手から離れつつある。生み出すときの苦しみは何度味わっても慣れないけれど、生まれ出た原稿を読むときは本当にうれしい。生きていてよかったんだなと、大げさにではなく、確かな平熱の温度で、そう思う。
むかし、友人の自傷行為の傷を見て思ったのは、これが彼女を癒しているのだろうなということだった。あたたかい血、確実な痛み、ぬるぬるとした触感、目をみはるまでに真っ赤な色。なんだかそれを想像したときに、ここでわたしが彼女を強く抱きしめたとしてもわたしの手は彼女の傷に届かないんだろうなって思った。もしかしたら、彼女が愛する人でも届かないのかもしれないなと。
出産のとき自分の大量の血のにおいにむせながら、他人にひどい格好をさらしながら、わたしはでもすごく癒されていた。赤ちゃんが泣いたときは、自分の中に新しい水が勢いよく満たされたような気がした。
自分のなかから出てくるものだけに癒される傷が確実に存在すると思う。