2018/06/25(月)
先日、東京に行ったとき、中央線の電車に乗った。
電車のなかで編集者に「嫌いなものってある?」と聞いたら、彼は「あるよ」と言った。
「なに?」
「美意識のないもの」
確か以前、彼に同じ質問をしたときには、彼は「嫌いなものはない」と答えたのだ。
嫌いなものができたのか、それとも嫌いだと思っていなかったものが実は嫌いだと自覚したのか、それともわたしにまたひとつ心のドアを開いたのか。
編集者は穏やかな顔で、
「そういうものは、僕が殺してあげたくなる」
と言った。
センスが「良い」「悪い」という言い方はありえない、と江國香織さんが何かに書いていた。センスは「ある」か「ない」か、そのどちらかである、と。
きっとそれを失ったら、わたしたちは人間じゃなくなるんだろう。
だから殺されてしまう。たとえば、隣に座っている編集者に。まるで虫のように。
朝から小説を書き、短歌を詠む。
焦らずに、愚直に手を動かそう。
燃やす命が、どうか美しくありますよう。