文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2019/02/03(日)

長男のプールの付き添いへ。待合室にパソコンを持ち込み仕事をする。2月は時間が少ない。もうひとり、パソコンで仕事をしているお父さんがいた。

午後も書類仕事や書籍の発送など。こういった仕事は部屋にひとがいても、しゃべりながらできるので、土日もできる。書類仕事はやはり苦手で、すごくストレスを感じたけれど。あの、「こういう場合にはどう書けばいいのか」がわからない感じがすごく苦手だ。

夕方、「フロリダプロジェクト 真夏の魔法」という映画を観た。安モーテルに泊まり続ける無職になったシングルマザーのヘイリー、その娘の悪ガキ、ムーニー。

パステル調のモーテルは、夢見がちなのにシリアスで。ムーニーたちが歩くのは、甘ったるく安っぽいアイスの匂いと、暑苦しく行き交う車の排気ガスの中。大味な街は外にいるのに閉じ込められているような、歩いても歩いてもどこにも着かないような、そういう感じで胸が塞がれるようだった。

ムーニーがこう言うシーンがある。

「どうしてこの樹が好きだか知ってる?

倒れても育ってるからよ」

ヘイリーは一度もムーニーに怒らなかった。いつも笑って、お金が入ったらすぐにおもちゃを買ってあげて。ムーニーの親友のジャンシーには、ハッピーバースデーの歌と花火をプレゼント。盗んだものを売ったお金で、ジャンシーにもお土産を忘れない。

ヘイリーはひとびとに中指を突き立て、自分と娘を生かすことに必死だった。ムーニーはママが何をしてお金を得てるかわかっててももちろん大好きだった。

この映画には魔法なんてない。

あるのは現実だけだ。

現実のなかで、ヘイリーとムーニーは笑っている。中指を立てながら、げっぷしながら、空き家に火をつけながら、ナプキンをドアに貼り付けながら、なんとか生きながら。