文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/04/13(金)

【心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球】

今日柳下さんがTwitterで、免許証の裏にある「臓器提供に関する意志表明」をじっくり見てみたと言っていた。わたしも免許証を取り出して見てみた。上記がその「臓器」のリストで、臓器提供に承諾したひとは、提供したくない臓器に×をつけてくださいと書いてある。

「僕は、自分でもまだ、理由を言語化できていないのだけれども、「眼球」だけは死後も奪われたくないなって思った。死んだらそんなこと関係ないのに? なぜだろう。理由は言語化できていない。でも、心臓を取られても、目を取られたら、僕でなくなるような気がした」
この柳下さんのTweetを読んで「同感」とおもわずつぶやいた。わたしも、眼球だけは一緒に燃やしてほしい。

『100年後あなたもわたしもいない日に』には、著者であるわたしとマユミさんへの質問リストがのっていて、その中に「大切なものは何ですか?」という問いがある。
そこでわたしは「手と目」と答えた。世界を見て、書いて、読む。その行為に必要なふたつ。そのふたつは、わたしの人生とともに一緒に燃やしたいと思った。わたしだけのものだから。わたしだけのものだから、書くことができたから。だから、誰かに渡すことはできない。


長男を学童に、次男を保育園に迎えに行く。
そこに、東京に住んでいる友達の今井くんが来てくれた。フィナンシェをお土産にもって。せっかくなので家にあがってお茶を飲んでもらう。持ってきてくれたフィナンシェはとてもおいしかった。
長男が喜んで今井くんにどうぶつしょうぎをせがむ。「どうぶつしょうぎ知らんねん」と言いながらも、将棋の知識があるらしくすぐにやり方を呑み込んで長男を負かしてしまった。長男はそういうときでもニコニコしている。相手をしてもらえたこと自体が嬉しくて、ラキューやら図鑑やらを持ってきては見せる。

今井くんは、わたしに柳下さんを紹介してくれた人だ。
「土門蘭は最高にいい文章を書くんですよ」と言って。
そのときわたしのお腹には次男がいて、柳下さんはわたしの文章を一度も読んだことがなかった。今、次男はよちよち歩いていて、わたしは柳下さんの編集のもと小説を書いている。だから今井くんは、わたしの人生に転機をもたらしたひとなのだ。

次男は最初人見知りをしていやがっていたが、今井くんが抱っこしてしばらくすると、胸に頭をもたれておとなしくなった。安定感があるのかもしれない。今井くんは抱っこがうまいなと思う。