文鳥社の日記

京都の出版レーベル・文鳥社の日記です。

2018/10/08(月・祝)

編集者に久しぶりに会った。
「君はあいかわらず世界からはみ出して感じがするね」
と彼が言った。「最近、疎外感をよく覚えるよ」と言うと、「『よるすべるてんかふん』の頃からずっとそうじゃないか」と言う。『よるすべるてんかふん』というのは、わたしが18歳のときから10年以上続けているブログだ。今はほとんど更新していない(なぜならこちらを更新しているから)。

彼に「世界から疎外されていると感じるということはない?」と聞いたら、少し考えてから、「ないな、あったけど忘れているのかな」と言った。
半分驚き、半分「そうだろうな」と思った。彼は疎外されるような人じゃない。自分から世界をハグしていく人だからだ。

わたしは毎朝そう感じている。朝が苦手なのは、また世界に0からなじまなくてはいけないからだ。うまくなじめるだろうか、今日は何が起こるんだろうか、傷つかないでいられるだろうか、傷つけないでいられるだろうか。いつも臆病な気持ちでびくびくしながら、目がさめる。
昼をすぎるとほっとする。少しずつなじんできているのかもしれない。夜がいちばん好きだ。あとは本を読み、眠るだけだから。


きのうはイベントだった。
わたしは「書く」ことについて、編集者は「編集」について話した。

「あなたの目には、世界は何色に見えていますか?」
という質問がイベント中にあがった。わたしはその質問がとてもおもしろいなと思い、自分だったらなんて答えるだろうと考え、「灰色」と答えた。「灰色のなかにときどききらっと光る宝石みたいなのがある。それをわたしは書きたいと思う」と。

でも、あとからよく考えると違うように思った。
灰色なのはわたしなのだ。世界は様々な色に満ちていてとても明るい。
ただ、それはあまりにも遠く、触れることができない。

灰色のわたしがその遠い世界に触れるときに、「書きたい」と思うのかもしれない。
あるいは、その遠い世界に触れるために書いているのかもしれない。